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 “投げ銭”ってご存知でしょうか。そう、ストリートミュージシャンの演奏や大道芸とかで、気に入ったらお金を投げ入れるアレです。以前、RADIOHEADがこの投げ銭方式でアルバムを発売したことが話題になりました。定価が設定されているわけでなく、聴き手がその価値を評価して支払う金額を決めるという仕組みは、ある意味で人間の性善説に基づいたものだと思います。

 この投げ銭方式を採用したブッキングライブ企画、その名も「NAGESEN」が、ワタクシ一推しの音楽グループ「ふぇのたす」により開催されました。ふぇのたすは以前からデモCDを度々この投げ銭形式で販売しており、今回はその延長線上での企画。対バンには人気急上昇中のアイドルグループ「BELLRING少女ハート」や、もはや大御所の「大森靖子& THE ピンクトカレフ」など集客力のあるメンツが揃い、チケットはほぼ発売と同時にソールドアウトになっていました(対バン発表ごとに3回に分けての発売でしたがいずれも即完売)。会場は下北沢GARDEN。無所属のインディーズバンド主催の企画でこのセールスは結構すごいのではないでしょうか。

 というわけで迎えた2014年9月26日。前から2列目センターを確保した上で、物販の列に並びました。お目当ては、この日に発売開始した渋谷QUATTROふぇのたすワンマンライブチケット! 物販の女神さわたす(ふぇのたすスタッフの方です)からの「良番ですよ!」という声に、整理番号を見ると「A11番」で確かに良番。開催当日の12月11日は平日なので、おそらく開場には間に合わないと思いますが。。実は同月7日(日)に行われる大阪ワンマンのチケットもネット通販で予約済み 。バンドのライブで地方遠征なんて、この歳になって初めてですよ本当に。ちなみに下の写真でチケットの奥にあるのは先行予約特典のデモ音源「ファッション戦争」。大阪の方には「大阪グルメタウン」というベタなタイトルの音源がついてくるらしく、そちらも届くのが楽しみです。

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みこちゃんお誕生日企画バンド

 前置きが長くなりましたが、いよいよ開演。オープニングアクトは、ある意味この企画の最大の目玉、ふぇのたすのボーカルみこちゃんにより新結成された「みこちゃんお誕生日企画バンド」です。普段のふぇのたすは打ち込みのトラックに被せる形で演奏するのですが、今回は生バンドの演奏をバックに歌うというレアな企画で、否が応でも期待が高まります。ふぇのたすからはボーカルみこちゃんのほか、普段Vドラムを叩いている澤”sweets”ミキヒコが生ドラムで参加。そこにShiggy Jr.のスーパーベーシスト森 夏彦とアカシックのギタリスト奥脇達也が加わった4人構成。前日にSoundCloudでデモ音源が公開されたので予習もバッチリです。

 もともと八雲ミコ名義でシンガーソングライターの活動をしているみこちゃん、当然ながら普通に作詞作曲できるアーティストさんです。ところがふぇのたすではジーニアス山本奨が女子以上の女子力を発揮した名曲を書いてしまうので、みこちゃんはボーカリストに徹しています。でもこの企画バンドではみこちゃん自身が作詞を手がけ、作曲はアカシックのメロディメイカー奥脇氏が担当。歌うのは同じみこちゃんでも、それ以外の背景がいつもと全く違うとあって、平日17時台の開場にもかかわらずあっという間に満員の勢いです。

 そしていよいよ開演。みこちゃんは普段の可愛らしい印象からガラッと変わって、シックで大人っぽい衣装で登場です。1曲目は「500日間」。普段のピコピコサウンドに乗せて歌うのもいいけど、重厚なバンドサウンドで歌うみこちゃんも素晴らしい。いかにもアカシックっぽいメロディラインを、オリジナルの理姫さんに負けないくらいしっかり歌いこなしていました。

 続いて2曲目は「みきひこくんへ」。女気のないミキヒコさんに捧げる歌のようです(謎)。ここでの発見は、ミキヒコさんちゃんとドラム叩けるんだ!っていうこと(笑)。いやもちろん知ってましたけど、この目でちゃんと確かめられて良かったです。個人的には電子ドラムより生ドラムの方が好きなので、ふぇのたすもこっちでやってほしいなと思いました。

 そしてラストは「バーニング」。お酒を飲み過ぎて起きられない朝を歌った曲です。って違うか。本日結成初ライブにして解散ライブということでしたが、またこのような楽しい企画を期待したいと思います。

(1,500点)

大森靖子 & THE ピンクトカレフ

 大森靖子さんのことは、ちょうどふぇのたすを知った昨年末ごろから気にはなっていたのですが、実際にライブで見たのはつい1ヶ月前の「MOOSIC LAB SUMMER FEST 2014」が最初。渋谷WWWで上の方から見下ろしていたのですが、アコギを掻き鳴らしステージを這いず回りながら歌う姿にノックアウトされてしまいました。その後インストアライブなど2回ほど見てこの日を迎えたわけですが、今回は「& THE ピンクトカレフ」ということでバンド編成。ピントカの演奏もかなりヤバイと聞いていたので、期待が膨らんでいました。

 照明が落ちると、5日前にロングヘアーをバッサリ切ったばかりの大森さんがバンドメンバーを従えて登場。ピンクトカレフ、確かにヤバイです。2本のギターで引っ張るやや荒削りなサウンドが、大森靖子の歌唱にこれ以上ないくらいドハマり。過去に一度だけライブで見た「椎名林檎&天才プレパラート」を彷彿とさせるステージでした。

 曲と曲の継ぎ目なく次々と演奏が続き、メジャーデビューシングル「きゅるきゅる」の間奏に入ったところで大森さんダイブを敢行。前から2列目中央に陣取った私の上空を飛行していきました(笑)。PARCO前広場のときは横目で見ていたのですが、今回は自らの両腕で貢献できて満足です。

 まあ私がここで言うまでもないですが、大森靖子は日本の音楽史に名を残す存在になると思います。少なくとも山崎ハコや森田童子クラスは間違いないです。いやいやもっと行くか。曲が特別いいとか、歌が特別上手いとかいうわけじゃないけれど、心を揺さぶる力、土足でズカズカ踏み込んでくるような力がある。一応PV貼り付けましたけど、ぶっちゃけこれを見ても彼女の魅力は100万分の1くらいしか伝わらないと思います。未見の方は、一度ライブで見ることをお薦めします。個人的にはやっぱりソロの弾き語りのほうが好きです。

(1,500点)

Vampillia

 前田敦子をネタにしたコントまでは面白くて良かった。でも、音楽は正直理解できませんでした。ツインドラムにエレキバイオリン、ギター2本にベースにキーボード。ボーカルを含めてステージ上9名の大所帯。ジャンル的には何に分類されるのでしょうか。無国籍なプログレ風サウンド? と言うよりは単に轟音と表現したほうが的確なような気がしますが。ボーカルは何を言ってるか聞き取れないし。キックボードや梯子を使ったパフォーマンスもぎこちない印象でした。

 とはいえドラマーの吉田達也氏とか相当な実力者みたいだし、バンドとしてもその筋では結構高く評価されているらしいので、個人的に趣味が合わなかっただけなのでしょう。でも、ふぇのたすとのヴァイブスは決して高くないと思うんだけどなぁ。Vampillia、今回一番謎のステージでした。

(点数計測不能)

BELLRING少女ハート

 そしてやって来ましたBELLRING少女ハート、略してベルハー。初めて聞くと、この名前だけで謎ですよね。だってドイツのBERLINじゃないんですよ。ベルがリンリン鳴るからBELLRINGなんだそうです。とまあ名前のことは置いておいて、いわゆる地下アイドルの中でもベルハーはいま最も勢いのあるグループなのではないでしょうか。今回が初見だったのですが、噂に違わぬすごいステージでした。いや、すごかったのはステージじゃなくて、むしろ観客の方なんですけどね。

 ふぇのたすのライブではアイドルが対バンに出ることが多いので、最近はヲタ芸もだいぶ見慣れてきたつもりでしたが、ベルハーのそれは次元が違いました。ファン同士がペアを作ってポーズを作ったり、みんなで輪になってぐるぐる回ったりと、まさにステージとフロアが渾然一体となった展開。メンバーもダイブこそしないものの、全身汗だくになってステージ上を駆け回ったり、口に含んだ水をファンに向かって霧状に吹きかけたりとやりたい放題。圧巻は、メンバー6人全員がステージ前の柵上に仁王立ちで歌う姿。もうね、完全にベルリンの壁ですよ。しかも柵の上でバランスを取るために、何と6人の右手をそれぞれファンが必死で支えているんです。いやーこのベルリンの壁はそう簡単には崩壊しませんよ。天晴です。

 このようにファンと一体となったパフォーマンスも見事でしたが、音楽的にもアイドルとしてはかなりクオリティが高い印象です。重厚なサウンドに歌唱力がついていけてない部分はありましたが、あの運動量ではそれも致し方ないでしょう。口パクに逃げずしっかり生歌を貫いているだけでも十分に偉いと思います。

 ただ残念だったのは、一部のファンのマナーですね。終盤に差し掛かるところで、「関係ない人はどいたどいたー!!」言わんばかりに、いきなり力ずくで押し退けられました。フロア前方は本当に好きな人に譲るべき、という考え方は否定しないけど、有無を言わさず力で追い払うのはどうなんでしょう。ひとこと「場所を譲ってもらえませんか」って言ってくれれば譲るんですけどね。そして彼ら、ベルハーが終わったら主催のふぇのたすを待たずしてとっとと消えてしまいました(もちろん残った人も沢山いましたが)。このイベントを何だと思ってるのでしょうか。彼らが投げ銭いくら入れて帰ったのか知りたいところです。

(パフォーマンス1,000点−ファンのマナー1,000点=±0点)

ふぇのたす

 そしてトリを務めるのは、我らがお待ちかねのふぇのたすです。前方を占拠していたベルハーファンが潮が引くように去っていったので(いや、空けていただいたんですね、ありがたす!)、入れ替わりで元のポジションへ復帰しようとしましたが、初動の遅れが響いて少し後ろになってしまいました。

 今回は主催イベントということもあり、曲数も多めで全8曲。「たす+たす」で始まり、続いて定番の「すしですし」と「スピーカーボーイ」。新曲の「ファッション戦争」を挟み、「東京おしゃれタウン」「たびたびアバンチュール」「おばけになっても」とこれまた定番、そして最後はお約束の「ありがたす」と、ふぇのたす初心者にも分かりやすいセットリストでした。途中で歌詞を間違えたりしたものの、全体としては安心して見ていられる危なげない演奏。みこちゃんの表情には貫禄すら感じられるほどでした。そうそう、みこちゃん今度はいつもの感じのかわいい衣装に変わっておりました。

 MCでは「みなさん、お金の準備はできてますか?」と、投げ銭企画の要であるお金についてアピール。「すしですし」の歌詞にも「OKANE」が紛れ込むなど、完全に金の亡者モードです。でもそれはそうでしょう、入場無料のこの企画、みんなが帰りにお金を払ってくれないと、会場使用料から対バンのギャラまで全部ふぇのたすメンバーの個人負担ですからね。「無所属新人なので(中略)リスクはメンバーが負う」とショウさんが書いてました。

 その後は、主催イベントならではのアンコールです。メンバー3人がNAGESENオリジナルTシャツを着て登場すると、「むかし僕が作った曲をやります」とショウさん。ステージには大森靖子さん、そしてみこちゃんお誕生日企画バンドで演奏したベースの森 夏彦氏が上がりました。そう、最後の演目はナンバタタン(タルトタタン+南波志帆)の代表曲「ガールズ・レテル・トーク」。ふぇのたす山本奨がプロデュース&作曲、大森靖子が作詞、森夏彦がベースで参加したナンバーです。

 この演奏は、個人的に思いっきりツボでした。まず、みこちゃんの声が曲調にピッタリ合ってる。オリジナルの南波志帆さんたちには悪いけど、みこちゃんの声のほうがしっくり来ました。やっぱりショウさんの曲にはみこちゃんの声が合うのかなぁ。本当に絶妙すぎました。ちなみに大森さんの声はあまり印象に残ってません。どうしてだろ。

 それから大きかったのがベースの存在! 音の厚みが一気に増して、とても聴き応えのあるサウンドになっていました。普段のふぇのたすも十分に素晴らしいのだけど、人間とは無い物ねだりをする動物なので、やっぱりベースも欲しいなと思ってしまいます。新メンバーとしてベーシストを迎えるのは難しいとしても、12月のワンマンでは何曲かゲストベースを加えて演奏しても良いのではないでしょうか。いずれにしても、大満足のアンコールでした。

(2,000点)

賽銭箱

 帰りにもう一度物販に並んで、NAGESEN缶バッジとみこちゃんお誕生日企画バンドのデモCDを買いました。デモCDは1,000円、歌詞カードが別売りで100円ですって。さすが関西人、いい商売してます(笑)。

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 そして最後に本日のメインイベント、投げ銭。採点した合計点数を日本円に換算して、透明なボックスに納めました。まぁ金額は最初から決めてたんですけどね。

 このとき気になったのが、箱の中身が千円札ばかりでその枚数も少なく見えたこと。勝手な推測ですけど、千円札1枚だけ入れて帰った人が多かったのではないでしょうか。この規模のライブだと、通常は入場料2,500円から3,000円くらいが相場です。なので、満足したなら最低でも2枚、できれば3枚以上入れてほしいところだと思います。

 賽銭箱を出演者ごとに分けたり、あるいは出演者自身が箱を持って受け付ける形を取れば、お客さんが入れる額も違ったんじゃないかと考えてみたり。そう言えば今回の出演者のうち、“満足度に応じてお金を払う”投げ銭の主旨を説明してたのは、トリを務めたふぇのたすだけでした。最後まで見ないで帰ったお客さんがどれだけ理解していたかは疑問です。こういう企画に出演するアーティストは、自分のファンに対して主旨を説明することが、主催者に対する礼儀だと思うのですがどうなんでしょう。

 このNAGESENが、赤字に終わってないことを祈るばかりです。そして、また次もぜひこういう企画にチャレンジしてもらいたいです。NAGESEN 2015、期待しています!

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